結論
- 会社の道具はGoogle側に寄せます。理由は費用の安さでも、引っ越しの楽さでもありません。データとAIを軸に事業を伸ばしていく会社として、譲れない条件があるためです。
- いちばん効く事実:AIに会社のデータを扱わせるのに、Microsoftは1人あたり月2,698円の追加契約が要り、Googleは0円です。当社は「人を大きく増やさず、AIの働きを増やして事業を広げる」進め方をとっています。AIとの連携費用が人数に比例して増える構造は、この進め方と逆を向きます。
- 制約:この判断により、会社のメールの引っ越しが一度だけ発生します(ドメイン自体は動かさずに済むことは実測で確認済み)。またお客様からお預かりする機微な情報は、GoogleでもMicrosoftでも、業務ソフトの中には置けません。そこは別に用意します。
1何をものさしに選ぶか
道具の善し悪しは「いま便利か」「いま安いか」では決まりません。この先ライドウィズがどう仕事をしていくのかから逆算します。前提に置いたのは、次の2つだけです。
- データとAIを軸に事業を伸ばしていく会社であること。
- 人を大きく増やさず、AIの働きを増やして事業を広げていくこと。
この2つから、道具に対する要求が3つ出てきます。本資料はこの3つだけをものさしにして、GoogleとMicrosoftを比べます。
- ①人を増やさずにAIを増やせること。AIとの連携費用が人数に比例して増える仕組みだと、「人は増やさずAIで広げる」という進め方そのものが成立しなくなります。
- ②お客様からお預かりする情報を、責任をもって扱えること。出店企業の原価・配合・取引条件といった情報を、すでにAIに扱わせています。誰がいつ何を見たかが残らない場所には置けません。
- ③仕事をした跡が、機械の読める形で残ること。同じことを二度入力しなくて済み、その記録をあとからAIが読める——これができないと、AIを増やしても仕事が積み上がりません。
そのうえで現状を並べると、こうなっています。
| 会社の大事なもの | いま誰の名義か | 会社のものか |
|---|---|---|
| 会社のメール(@ridewith.co.jp) | 会社(Microsoft 365) | はい |
| 会社のホームページ | 会社(古川社長が管理) | はい |
| 全社の共有フォルダ(資料の正本) | 佐々木 個人のGoogleアカウント | いいえ |
| 業務を回しているAI | 佐々木 個人の契約 | いいえ |
| 売上・アクセスの分析基盤 | 会社用に作ったGmailアカウント | いいえ |
| 社外共有ページの置き場 | 会社用に作ったGmailアカウント | いいえ |
もうひとつ、規模が小さい今のうちにやるほど安く済むという事情があります。人も、顧客も、資料も増えてから移すと、同じ作業が何倍にもなります。
2結論:GoogleとMicrosoft、どちらに寄せるか
いま会社の道具は2つに割れています。メールと会議はMicrosoft、ファイルとAIの自動処理はGoogle。この状態はどちらの使い方も中途半端になるので、どちらかに寄せます。結論はGoogleです。
先に正直に申し上げます。費用だけで比べると、Microsoftのほうが年5万円ほど安く済みます。それでもGoogleを選ぶのは、第1章の3つの要求に対する答えが違うからです。
理由① AIとの連携費用が、人数に比例するかどうか
Microsoftで、AIに会社のメールやファイルを扱わせようとすると、1人あたり月2,698円の追加契約が必要です(しかもその機能は現時点でまだ試験提供の扱いで、本番利用は想定していないと明記されています)。Googleは追加費用0円、標準の料金に最初から含まれています。
8人なら年26万円の差ですが、本質は金額ではありません。「人は増やさずAIで広げる」という進め方に対して、Microsoftは"AIに触らせる権利"を人数で数える構造だという点です。進め方と向きが逆になります。
理由② データを扱う側が、すでにGoogle側で動いている
売上の分析も、毎日の自動処理も、いまGoogleのクラウド上で動いています。ここに業務の道具だけMicrosoftを置くと、AIは「業務の鍵」と「データの鍵」を2つ持ち歩くことになります。当社はAIへの任せ方を段階に分けて記録に残す設計にしていますが、それを2系統で維持するのは、少人数の組織には重すぎます。
理由③ 「人の確認なしにお客様へ出さない」を、規律ではなく仕組みで守れる
当社は「人が確認していないものは、お客様に出さない」を原則に置いています。ここに面白い違いがあります。GoogleのメールはAIから送信できません(下書きの作成まで)。一方Microsoftは送信までできてしまいます。
機能としてはMicrosoftが上に見えますが、当社の原則からすると逆です。Googleなら「AIがうっかり送ってしまう」ことが構造上起こりえないのに対し、Microsoftでは同じ原則を人の注意深さだけで守り続けることになります。人が減り、AIが増えるほど、この差は効いてきます。
| 第1章の要求 | Googleに寄せる | Microsoftに寄せる |
|---|---|---|
| ①人を増やさずAIを増やせる | ◎ 追加費用 0円 | ✕ 1人あたり月2,698円 |
| ②お預かりした情報の責任に耐える | △ 業務ソフトには置けない | △ 同じく置けない(差がつかない) |
| ③仕事の跡が機械の読める形で残る | ◎ 分析・自動処理と同じ側 | △ 鍵が2系統に分かれる |
| (参考)費用 8人・年 | 153,600円 | 100,704円 |
| (参考)会社のメール | 引っ越しが1回必要 | 動かさなくてよい |
判断を左右しなかったこと
- お取引先がどちらを使っているか:企業のお客様はMicrosoftが多数派ですが、会議に招かれる分にはどちらでも参加できます。出店いただく生産者の側は、そもそもITをお持ちでない前提で当社が代行する設計なので、影響しません。
- お客様からお預かりする機微な情報の置き場:原価・配合・取引条件のような情報は、GoogleでもMicrosoftでも、業務ソフトの中には置けません(この規模で契約できる範囲では、どちらも「誰がいつ見たか」の記録が十分に残らないためです)。専用のデータ基盤を別に用意します。つまりこれはどちらを選ぶかの基準にならない、という整理になりました。
- この先ずっと使えるか:これは誰にも読めません。ですので「ずっとこれで行く」ではなく「いつでも乗り換えられる形を保つ」を答えにしました。会社の記録は、どのソフトにも依存しない素朴な形(テキストファイル)で持ち続けます。
唯一の弱点:会社のメールの引っ越し
Google案の弱点はここだけです。会社のメールはいまMicrosoft側にあるため、一度だけ引っ越しが発生します。Microsoftに寄せればこれは起きません。この一点と、上の3つの理由を天秤にかけた結果が、今回の結論です。
.co.jp の移管手続き)は不要です。
ただし1点だけ、やり直しのきかない瞬間があります。メールの配送先は同時に2か所へ向けられないため、過去のメールを先に移し終えてから、最後に配送先を切り替えるという順序になります。
あわせて、現在の設定にはShopifyとメール配信サービスの情報も同居していることが実測で分かりました。書き換えの際にこれを消すとお客様への注文確認メールが迷惑メール扱いになる恐れがあるため、事前に控えを取ります。
3そのうえで決めたい3つのこと
① 会社名義のGoogleを用意し、共有フォルダを会社のものにする
第2章の結論を実行に移す一手です。いま全社の資料が入っているフォルダは、佐々木の個人アカウントの中にあります。会社名義のGoogleを新しく作り、そこへ引っ越します。1人あたり月1,600円。
あわせて、メール・カレンダー・ファイルもGoogle側に寄せ、Microsoftは最小限だけ残す形にします。ここで「会社の資料が個人のアカウントに載っている」という問題も同時に解消します(第1章の表をご参照ください)。
② 社内の連絡をSlackに一本化する(Teamsをやめる)
いま社内の連絡はTeamsとSlackに割れています。AIが書き込めるのはSlackだけで、Teamsには書き込む手段がありません。AIからの報告・確認依頼を受け取る場所として、Slackに寄せます。1人あたり月1,050円。
有料版にするのは、無料のままだと社内のやり取りが90日で見えなくなり、来年7月に完全に消えるためです。人の会話が乗る以上、残す必要があります。
③ AIを個人契約から会社契約に変える
いま使っているAIは個人向けの契約で、入力した内容がAIの学習に使われる可能性があり、記録も5年残ります。会社契約に変えると、学習には使われず、記録も30日で消えます。1人あたり月およそ3,100円。
国の指針でも、業務でAIを使う際は「その事業者が入力内容を学習に使わないことを十分に確認する必要がある」とされています(個人情報保護委員会)。出店企業の原価や取引条件をAIに扱わせている以上、ここは変えておきたいところです。
SlackとTeams以外は検討しなかったのか詳細
Google Chat・Discord・Chatworkも比較しました。Google Chatは無料で使えて悪くありませんが、AIからの自動連絡を送れません。Chatworkは中小企業への普及度が高い一方、話題ごとに会話を枝分かれさせる機能がなく、後からAIに読ませるときに手間が増え続けます。Discordはサーバーの持ち主が個人アカウントにしかなれず、今回解消したい問題をそのまま作り直すことになるため見送りました。
参考:出店企業とのやり取りは、この3つに含まれるのか
結論から申し上げると、費用は増えません。出店企業は社外の方なので、席(ライセンス)を用意する必要がないためです。上の3つは社内の話です。
ただし①〜③の優先順位には1つ効きます。③AIの会社契約の重要度が上がります。出店企業からお預かりしている原価・取引条件・レシピといった情報を、すでにAIに扱わせているためです。社内の都合ではなく、お預かりしているものの性質の問題になります。
方針の考え方は「相手にやり方を変えていただくのではなく、こちらが吸収する」です。生産者の平均年齢は67.7歳(2025年農林業センサス)で、「このツールを使ってください」は通りません。ただし吸収する=あらゆる手段を受ける、ではありません。受け皿のない手段をご案内するほうが、かえってご迷惑をおかけします。そこで次のように整理しました。
- 入口はメールに一本化します。すでに会社の窓口アドレスがあり、AIがそこを読める状態も確認できています。
- LINEでのお受け取りは、ご案内から外します。これまで依頼文に「LINEでも構いません」と書いていましたが、受け皿を用意していませんでした。約束と実態が食い違っていたため、文面を直しました。
- 届いたメールは毎日自動で記録します。企業ごとに振り分けて残す形にします。返信を送るのは、これまでどおり人が行います。
- 打ち合わせはオンラインに寄せます。いま唯一、自動で文字起こしが残っているのがオンライン面談で、これが最もAIと相性が良いためです。
なおFAXは当社に番号がなく、届いた実績もありませんでした。今回の検討からは外しています。
いずれも費用ではなく仕組みの話なので、今回のご判断には含めていません。
4かかる費用
なお8人全員が3つとも必要とは限りません。とくにAIは実際に使う人数だけで契約でき(最低2席から)、たとえばAIを4人分に絞れば月4万6千円→月3万4千円(年40万円)になります。
5お金をかけずに、今すぐできること
これは7月19日の定例で「実施する」と決定済みで、金澤さんへ依頼する段取りまで決まっています。作業は管理画面の設定変更のみ・約5分・追加費用ゼロ・元に戻すことも可能です。まだ着手されていないため、改めてお願いしたい一件です。
なお、記事を増やす前にこれを済ませる必要があります。順序が逆になると、書いた記事がAIから見えないまま溜まり、制作費が無駄になります。
6お願いしたいこと
ご判断・ご対応いただきたいこと
- 「Googleに寄せる」という方針のご承認(第2章)。これが本資料の主目的です。以下はすべてこの結論に付随するものです。
- 費用のご承認(月およそ4万6千円・8人想定)。3つまとめてでも、優先順位をつけて段階的にでも構いません。優先順位をつけるなら①会社名義のGoogle → ③AIの会社契約 → ②Slack有料化の順を推奨します。
- 現在のMicrosoft 365の契約内容のご確認(プラン・席数・年額・更新月)。減らせる金額を出すために必要です。
- ドメインの設定変更をいつ行うかのご相談。技術的に可能なことは実測で確認済みです(第3章)。残るのは「過去のメールを移し終えてから配送先を切り替える」という段取りと、その実施時期だけです。
- ホームページの設定切替(第4章。7/19に決定済み・5分・無料)。金澤さんへの依頼は佐々木から進めます。
いずれもご承認をいただく前に契約や支払いは行いません。現時点で発生している費用はありません。
まだ分かっていないこと(正直に申し上げます)前提
- 現在のMicrosoft 365の正確なプラン・席数・年額・更新月。減らせる額が出せていません。
- 移行そのものにかかる手間と、新旧を並行して使う期間の費用。上記の金額には含まれていません。
- 顧客管理の仕組み(CRM)は、今回の3件には含めていません。顧客が数十社を超えた段階で改めてご相談します。
- バックアップの整備も未着手です。ただし会社名義のGoogleに移らないと、そもそも導入できないことが分かったため、①の後に回しています。
技術的な検討の全文は、社内資料 70_バックオフィス/20260725_業務システム基盤ゼロベース設計_v1.html にあります。